厚労相の宗旨替え?認識不足?

 医療保険の保険金について、日本医師会が「国保などの保険料には上限があるため、高所得者が優遇される結果、格差が拡大する」として、保険料は原則、所得(または年収)に比例させるべきだと提言した。

 これに対し、11月14日の衆議院厚生労働委員会舛添要一厚労相は「(現行の制度では)たくさん保険料を支払うことで、100倍よい薬がもらえるというわけではない。給付と負担のバランスを考えれば、一定の条件を設けた方が国民のコンセンサスが得られると思う」と回答した。

 とのことである。 http://www.cabrain.net/news/article/newsId/19170.html
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 医療保険制度とは、国民の健康に対するリスクを分散・分担することに大きな意義があるのであり、投下資本に見合う利益を回収するという性質のものではないことは、諸処に指摘されているところではないか。

 疾病は所得の多寡にかかわらず起きるものであり、その症状・重篤度もしかりである。そして、高額所得者だから高額医療でなければ治らないというわけでもないし、そうしなければならないというわけでもない。医師達はあくまでも症状に応じた、より適切な医療を提供するよう努めているではないか。低額医療で間に合う分はそれを受けることで保険制度がより円滑に運用されるものと思うし、望ましいことである。

 わが国では国民皆保険制度であり、所得の多寡にかかわらず同質の医療を受けることができるという点では最高のシステムであるとも評価されているところではなかったか。

 さらに追加すると、「国民のコンセンサス」というときの「国民」をどこに見ているのだろうか。バブル期の「1億総中流」と言われていた時代では、多くの国民の共感を得たかも知れないが、少数の富者と大多数の貧者という格差社会の時代で厚労相のコメントにコンセンサスを与える国民はどれだけいるか。

 厚労相就任当時の勢いはどこへやら、だんだんと官僚に骨抜きされているように思えるのは貧者のひがみか。